ひとりでいる時間が、急に重たく感じる日があります。誰とも話していないだけなのに、胸の奥がざわついて、「このままで大丈夫かな」と考えてしまう。そんなときに手に取ったのが、岡本太郎の『自分の中に孤独を抱け』でした。

孤独は、なくすものだと思っていた
孤独という言葉には、どこかネガティブな印象があります。寂しい、満たされない、誰にも分かってもらえない。できることなら、感じずに済ませたいものだと思っていました。
でもこの本は、孤独を追い払おうとしません。「孤独を抱け」と、かなりはっきり言い切ります。その強さに、最初は少し戸惑いました。
わかり合えなさを、前提に生きる
岡本太郎の言葉は、「人は本当の意味では分かり合えない」という前提に立っています。少し突き放すようでいて、不思議と冷たくはありません。
分かってもらえないからこそ、自分の感覚に立ち戻る。他人の評価に寄りかかりすぎず、自分の中の衝動や違和感を信じる。その姿勢が、この本全体を貫いているように感じました。
孤独は、戦う相手ではなかった
この本は、「強くなれ」とも「孤独を克服しろ」とも言いません。ただ、孤独の中に立て、と言います。そこから逃げずに、自分の足で立つこと。その静かな覚悟が、何度も語られます。
孤独は、敵ではなく、自分自身と向き合う場所。そう捉え直したとき、ひとりでいる時間の意味が、少しだけ変わりました。
本を閉じたあとに残ったもの
読み終えて、孤独が消えたわけではありません。でも、「孤独でいる自分は未完成だ」という感覚は、薄くなりました。ひとりで考え、迷い、立ち止まる時間も、ちゃんと人生の一部でいい。
『自分の中に孤独を抱け』は、孤独を癒す本ではありません。でも、孤独と一緒に立つ勇気をくれる本でした。
📚 今回紹介した本
自分の中に孤独を抱け(岡本太郎/青春文庫)
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✍️ コラムニスト紹介

かれん|ヴァーチャルブックカフェ店主
Virtual Book Cafe TERRACE(ヴァーチャル ブックカフェ テラス)
実店舗を持たないオンライン上の小さなブックカフェをひらいています。本を読みながら考えたこと、本を閉じたあとに残った気持ちを、そっと言葉にして置いていく場所です。答えや正解を渡すのではなく、「こんな考え方もあるよ」と、テラス席にコーヒーを置くような気持ちで書いています。
TERRACEは、本を片手に少し外の空気を吸うための場所。「こうしなきゃ」から一度降りて、自分のペースを取り戻すための心のテラス席です。完成していなくても、うまく言葉になっていなくても大丈夫。途中の気持ちのまま座っていい場所でありたいと思っています。気になる方は、またふらっと覗きに来てください。
場所:インターネットのどこか / 発信源:福岡県北九州市某所 / 営業時間:気が向いたときにオープン / 定休日:決めていません
📖 バックナンバー
vol.03:西の魔女が死んだ
vol.02:まだ見ぬ彼方へ放て
vol.01:覚悟の磨き方
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