「ぬが」
私が自分で思い出せる、いちばん小さい頃の記憶です。
はっきりした年齢は分かりませんが、ぺたんと座っていて、まだ歩けていなかったように思うので、1歳前後だったのかもしれません。
当時、私の実家は小さな商店を営んでいました。
店番をしていた母に、私が
「ぬが」
と言うと、母は、
「わい!」
と言って笑いました。
私が方言を話したことがうれしかったのか、その言い方がおかしかったのかは分かりません。でも、母が笑っていたことは、今でもぼんやりと覚えています。
「ぬが」は、与論島の方言で「何?」。「わい」は、驚いたときに思わず出る「わあ!」「まあ!」のような言葉です。
私が最初に覚えた言葉は、もしかすると与論島の方言だったのかもしれません。
島の言葉と、母の笑い声。それが、私の中に残っている、いちばん古い与論島の記憶です。
幼い頃の私
はじめまして。北九州市若松区で「小さなおうち まるみいず」という、子どもたちが自分のペースで過ごせる場所をつくっている薄井瑞恵です。
今回から1年間、毎月2回、こちらでコラムを書かせていただくことになりました。
一つは、私が生まれ育った与論島のこと。もう一つは、これまで出会った12人の子どもたちのこと。そして、その二つにつながっている現在の「まるみいず」のことも、少しずつ綴っていきます。
北九州市若松区の「小さなおうち まるみいず」
与論島と聞くと、青い海や白い砂浜を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、海はとてもきれいです。でも、私が書きたいのは、観光地としての与論島だけではありません。
島で暮らしていた人たち、子どもの頃に見ていた景色、夢中になって遊んだ時間、家族や島の人たちとの関わり。振り返ると、その一つひとつが、今の私の子どもとの関わり方や、「まるみいず」という場所づくりにつながっているように感じます。
これから1年間、笑ったこと、驚いたこと、ときには胸がぎゅっとなった出来事も、きれいにまとめすぎず、私自身の言葉で書いていきたいと思います。
読んでくださった方の心に、島の風や子どもたちの姿が、そっと届きますように。
母と私、与論島で
WRITER
このコラムを書いた人
まるみいず 薄井瑞恵
安心できる人と自然が、子ども本来の力を育む。
目指していること
はじめまして。小さな居場所「まるみいず」を運営している薄井瑞恵です。
まるみいずは、学校にも集団(放課後デイサービスなど)にもなじみにくい子どもたちが、安心して過ごせる小さな居場所です。
不登校や行き渋りの背景は、一人ひとり異なります。
集団がしんどい子、気持ちを言葉にするのが苦手な子、外に出るだけで精一杯の子もいます。
だからこそ、まず大切にしたいのは、何かをさせることではなく、安心してその場にいられることです。
まるみいずでは、その子のペースを尊重しながら、「ここなら大丈夫かもしれない」と感じられる時間を少しずつ積み重ねていきます。
大切にしていること
1
少人数であること
まるみいずは、1枠最大3名までの少人数で過ごす居場所です。
人が多い場では緊張しやすい子でも、落ち着いて過ごしやすい環境を大切にしています。
2
無理をさせないこと
最初から話すこと、活動に参加すること、頑張ることを求めません。
見るだけ、座るだけ、その場にいるだけでも大丈夫です。
3
その子にとっての小さな前進を大切にすること
学校に戻ることだけを急がず、まずは安心・回復・外に出られること・人と過ごせることなど、小さな変化を大切にします。
4
保護者の不安も一緒に受け止めること
子どものことを考えるほど、保護者の方も悩みや不安を抱えやすくなります。
まるみいずでは、子どもだけでなく、保護者の方の気持ちにも丁寧に向き合うことを大切にしています。
運営者について
まるみいずは、私が一人で運営している小さな居場所です。
これまで小学校教員として18年勤務し、うち7年は特別支援学級を担当してきました。
そのほか、幼稚園勤務なども経験し、園児から小学生までの子どもの育ちやつまずきに、現場で関わり続けています。
集団になじみにくい子、気持ちをうまく言えない子、頑張ろうとするほど苦しくなってしまう子を、これまで多く見てきました。
だからこそ、決まった形に当てはめるのではなく、その子の状態に合わせて関わることを大切にしています。
派手な支援ではなくても、安心して過ごせる時間の積み重ねが、子どもの回復の土台になると考えています。
PROFILE
薄井 瑞恵
小学校教員として18年勤務(うち特別支援学級7年)後、幼稚園勤務
小学校教諭・幼稚園教諭資格保有
福岡県認定子育て支援員
与論島の自然の中で育ち、子どもが安心して過ごせる環境の大切さを身近に感じてきました。若松の一軒家という環境を選んだのも、子どもが自然や暮らしの空気を感じながら、無理なく過ごせる場を大切にしたいと考えたからです。
最後に
まるみいずは、すぐに変わることや、すぐに元気になることを目指す場所ではありません。
まずは、安心していられること。
自分のままでいてよいと感じられること。
そして、少しずつでも「また来てもいいかもしれない」と思えること。
そんな小さな積み重ねを大切にしながら、子どもとご家庭にとって無理のない形で関わっていきたいと考えています。
COLLABORATION
北九なび コラムライター募集中
「北九なび」では、あなたの専門知識や想いを届ける
月1回以上の連載コラムを執筆してくださる方を募集しています。
1年間、継続して執筆できる方
読み手のためになる情報を届けられる方
人柄や想いを通じて、活動の魅力を伝えたい方
あなたの知識、経験や想いを、北九州の皆さんに届けてみませんか?
詳細・お問い合わせはこちら
→